現代西洋医学と東洋医学の違い

「日本での西洋医学は伝染病の予防で発達した」
   日本で「医学」として法律でみとめ、一般の病院で行われているのは現代西洋医学である。その歴史は、明治政府によりドイツ医学を中心とした西洋医学を正 統医学としたことに始まる。

   安土桃山時代あたりから西洋の文化が伝わるなかで西洋医学もはいってきたが、医学の主流は6世紀前半、飛鳥時代に中国から伝 わった東洋医学(漢方医学)であった。

   しかし、日本人の新しいもの好きは昔も今と同じで、江戸時代中期には西洋医学への流れは拍車をかけた。西洋医学が広 く用いられるようになったのは、ひとつには軍隊との関係がある。

   明治政府は対外政策において富国強兵をスローガンとし、軍備の近代化を始めた。軍人にとっ て必要とされる医療の多くは怪我の治療であり、伝染病の予防である。

   これは西洋医学が最も得意とするところで、薬や外科治療が重宝されたのは当然で、東洋 医学(鍼灸や漢方薬)による時間をかけた治療は向かなかった。

   つまり政策上からも西洋医学を選んだという訳である
「人間は極めて精密な機械ではなかった・・・」

  現代西洋医学の中心原理は人間機械論や特定病因論である。人体とは、心臓、肝臓、腎臓、肺、脳のような部品(臓器・器官)から構成される「極めて精密な 機械」であり、病気の原因もそれらの臓器や器官にあると考える。

   だから「一つの病気には特定の臓器に特定の原因がある。治療とはその特定の原因を取り去る こと、あるいは補うこと」この特定病因論に基づく現代西洋医学は、これまで感染症や外傷などの治療には有効であることが多かった。

   しかし、機械的に観る 為、部分的、局所的な視野では人間全体を観ることが出来ない。さらに、感染症や急性の病気から、成人病などの慢性で治りにくい病気へと中心が変わってきた 現在、特定病因論では、原因となる臓器がわかっても治療法がなかったり、原因すら分からないことが起こってきた。
「人間の体は本来完全な一個の世界であり、
調和のとれた世界である」

 一方、東洋医学は、人間の体を「本来完全な一個の世界であり、調和のとれた世界である」と考える。これは万物みな同じで、自然の調和の中に人間も当然含 まれている。

   この調和をバランスと置き換えれば分かりやすい。バランスのとれた状態こそ健康であり、病気とはバランスが乱れたものである。この乱れた状態 を元に戻すことが東洋医学の治療の基本である。

  また、生気論「体を部分に分けず、統一体として生命をみる」という考えにより、病める部分だけを診るのでは なく、体全体、さらに精神状態や生活環境までトータルで診ている。
   その為、現代西洋医学では病気とみなさないような軽微な段階のうちに治療を開始する事が 出来る(これを未病治という)。

   こうした特徴は、急性・慢性的な疾患、病気の予防、初期治療にも有効であることを意味している。さらに、現代西洋医学では 難病とされている疾患でも、現代西洋医学と疾病観の違う東洋医学では、効果的な治療を期待できることもある。
「西洋と東洋の良い所を組みわせて治療していければいいというのは不可能」

 現代西洋医学と東洋医学は、歴史、文化、哲学、思想、疾病観、人間の観かたなど、明らかに異なっている。「西洋と東洋の良い所を組みわせて治療していけ ればいい」といわれているが、実際には難しく、現在の状況は不可能に近い。

   現代西洋医学と東洋医学には患者の治療という目標は同じでも、そこまでに至る過 程がまったく違う。針や灸を、東洋医学を理解せずに、安易に西洋医学の診断で施術すれば、患者に損害を与えてしまう事も珍しくない。

   現代西洋医学を東洋医 学の理解した医者の方は、自らに用いず漢方薬や鍼灸治療をされる方が多い。また、東洋医学に詳しくない医者すら、患者に出す薬を自らが病気になった時には、その病気に関して専門であればあるほど飲まない。

   これはまさに東洋医学がまさに人間そのものを診る医学であることを示すものではないだろうか?
鍼灸医学と他の療法との違い
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